【試合巧者】アンチェロッティ・ナポリの完璧な試合運び【第8節ナポリ対サッスオーロ】

ナポリはリバプール戦で勝利をおさめたが、コンディション面で不安があるためインシーニェやカジェホン、ハムシクやアランを休ませるターンオーバー。代わりに出場する選手の質も高いのがうらやましい。ユベントスが連勝街道まっしぐらなので、なんとか離されないように勝ち続けていきたいところ。

サッスオーロはベラルディやセンシ、ディ・フランチェスコがベンチスタート。こちらはターンオーバーではなく、ダブルトップ下のように狭いハーフスペースでのプレーや守備での貢献を求めるときに、ベラルディやディ・フランチェスコではどうなのかな、という意図があったように思う。ミラン戦で負けはしたが、スコアほどの差は全くなかった。ミラン、ナポリと厳しい日程ではあるが、なんとか上位陣にくらいついていきたいところ。

このブログで取り上げることの多い両チームの試合。個人的にかなり楽しみにしていたが、またもやアンチェロッティの名将ぶりを目の当たりにすることとなった。



・ボール保持を捨てたナポリ

ナポリはこの試合でも4-4-2でスタートしており、完全にシステムが移行されている。ウナスとヴェルディは状況によってポジションが入れ替わることがあった。サッスオーロは相手が2トップでくるので、3-4-3を採用。最終ラインで数的優位をつくってビルドアップを安定させる狙いがある。

前半3分にロカテッリのバックパスをそのままウナスに拾われてはやくも先制点を許したサッスオーロ。サッスオーロはボールを保持して戦うチームだが、ビルドアップでの細かいミス(ロカテッリのような)と、敵陣に押し込んだあとのカウンターに対して守備が脆い。一方ナポリはボール保持のカギとなるハムシクやインシーニェら多くの主力がおらず、早い時間に先制点が決まったこともあり、ポゼッションをサッスオーロへと譲った。その代わり、前線からのプレスでひっかけさせカウンターを狙うスタイルを選択した。自分たちのサッカーを全面に押し出していたサッリ時代では考えられないような戦い方だ。アンチェロッティはレアル時代にも、鉄壁&カウンターを得意とするアトレティコにあえてボールを持たせるような戦い方をしたり(あの面子が揃っていながら)と、柔軟性がえげつない。

・4-4-2のディフェンス

ボールが中央にある時のナポリは非常にコンパクトに守り、サッスオーロの3トップにスペースを与えず、そのエリアにボールが入ってきたらすぐに囲い込んでボールを奪う。ロジェリオとリローラがワイドに開いて幅を取りたいのだが、ナポリは基本的に無視。マニャーニから一本のピンポイントのパスで展開されることはほとんどなかったので、サッスオーロは展開するために両脇のCBを経由する必要がある。

そしてサッスオーロのビルドアップをつぶすうえで、実は重要になってくるのがサイドバックやウイングバックを抑えることだ。ナポリの4-4-2はサッスオーロの中盤二枚(ロカテッリとマニャネッリ)に対して、それぞれログとディアワラがケアする。両サイドハーフはハーフスペースでプレーするボガとジュリチッチへのパスコースを消す。そしてサッスオーロがウイングバックを経由しようとすると、ナポリのサイドバックで出てきて潰しに行く。パスが渡っても、前を向かせないことでパスコースがないので、ボールを下げるか、無理に出そうとして引っかかるかになる。中→中に対してはコンパクトに守りスペースを与えず、サイドに展開されるとすぐにスライドして、ビルドアップの起点をつぶす。ナポリはすでにお手本のような4-4-2の守り方をみせている。なのでサッスオーロはいつものようにポンポンとパスを繋ぐことができない。

それでもジュリチッチが狭いスペースで受けてボアテングやボガと三角形をつくり、なんとか局面を打開しようとしたが、得点は生まれず。ナポリも何度かチャンスはあったものの決めきることができずに前半を終えた。前半終了時のボール支配率はサッスオーロが62%、ナポリが38%とサッリ時代では考えにくい数値だった。

・ベラルディ投入

後半開始と同時にまずミスを連発していたロカテッリを下げてブラビア、そしてボガに代えてベラルディを投入したサッスオーロ。これによってベラルディとジュリチッチが近い距離でプレーしてコンビネーションで崩そうと試みたり、ベラルディが大外に開けば、前半もうまく狭いエリアでプレーできていたジュリチッチにさらに余裕のあるスペースを作り出すことができたりした。

また前半では両脇のCBを経由して展開していたが、おそらくハーフタイム中に指示があり、マニャーニから意識的に一本のパスでロジェリオを狙うシーンが何度も見られた。デ・ゼルビはしっかりと修正してきており、後半立ち上がり5分間はサッスオーロが何度もチャンスを作り出していた。

・アンチェロッティの試合運び

後半立ち上がりからやや流れが悪いナポリは後半5分ではやくもウナスに代えてインシーニェを投入。ビルドアップにも参加して、ボールを持つことができ、流れを変えることのできる選手をピッチに送り込んだ。さらに後半10分、下がってビルドアップに参加しようとするベラルディやジュリチッチへの対応に危うさが見られ、前半ですでにイエローカードをもらっていたディアワラを下げてアランを投入した。インシーニェが得意の裏への抜け出しからシューまでト持って行くことでサッスオーロのラインを下げたり、アランが中盤での潰し役やビルドアップの安定をもたらしたりと、徐々にナポリペースで試合が進んでいくようになった。押し込まれる展開になるとサッスオーロは前線へアバウトなボールを入れるしかなくなり、ボアテングやベラルディの個人技に頼るような形になるが、残念ながらそこには常にクリバリがいてほとんどつぶされてしまう。そしてナポリが押し込みサッスオーロの運動量が落ちてきたところで、カジェホンを入れて完全に試合の主導権をものにしようとしたアンチェロッティ。後半27分にショートコーナーの流れから、インシーニェが見事なシュートを決めて追加点。ナポリがターンオーバーをしながらもサッスオーロ相手に見事な勝利をおさめた。

・おわりに

それにしてもアンチェロッティの試合の流れを読む力は恐ろしい。先制点はロカテッリのミスではあるが、前からプレスをかけにいったことでうまれたミスだ。そういう意味では90分間を通して、常にアンチェロッティが思い描いていた通りの試合運びになっていた気がする。サッリ監督のナポリはとても美しく魅力的なサッカーだったが、アンチェロッティはナポリにバランスや安定感をもたらし、チームとしてはより強くなっていくような印象を受ける。サッスオーロはミランとナポリ相手に連敗したことで順位を落としてしまった。しかしデ・ゼルビのとても魅力的なサッカーは継続してみられ、それも毎試合システムを相手に合わせながら自分たちのサッカーをしていくところが素晴らしい。徐々に対策されはじめる時期にどう対処していくかがとても楽しみだ。自分の好きなチームで、こういう魅力的なサッカーを観てみたいものである。(個人の感想)