【先制点がすべて】ワンチャンスでサッスオーロを崩壊させたミラン【第7節サッスオーロ対ミラン】

サッスオーロは前節SPAL相手にターンオーバーを用いて快勝。多くの主力を休ませたことでコンディションは整っており、ダンカンがブラビアになっている以外はいつものメンバーだ。サッスオーロはこの試合では”もちろん”4-3-3を採用してきた。いつものミランでくるのであれば、これは当たり前の選択だった。

対するミランは3試合連続ドロー中と不調が続いており、さらにはイグアイン、クトローネ、ボリーニとCFが全滅する状況。とりあえずカスティジェホを9番のポジションに起用して、いつもの4-3-3を採用した。ガットゥーゾ監督を取り巻く状況も変わりつつあり、なにがなんでも結果がほしかったところ。

試合前、今季の両チームを観ている人ならある程度展開が予想できるだろうという状況の中、ガットゥーゾ監督は今季のサッスオーロにとって最も警戒しなければいけない選手/スペースにどう対策をしてくるのか、というところに個人的に注目していた。しかし、試合開始直後から悲惨なほどにやられ続けてしまった。もちろん警戒しなくてはいけないのは、ハーフスペースでフリーになるセンシだ。



・ひたすらやられ続けるミラン

いつものようにミランはアンカーをトップの選手(カスティジェホ)が見て、CBに対してはケシエとボナベントゥーラがそれぞれプレスをかけにいく。

もはやおなじみの図ではあるが、このプレスはチーム全体で連動していなければいけないのだが、ミランの場合はそのファーストプレスをかわされたときのリスク管理がまるでできていない。もちろん、それぞれセンシとブラビアはフリーになる。

前から中途半端にプレスをかけてくれるのはサッスオーロにとって最高のプレゼントだ。ケシエがプレスをかけると、ロカテッリを経由して簡単にハーフスペースでフリーとなっているセンシへと渡ってしまった。

次に逆サイド、ボナベントゥーラのプレスをサイドバックでかわすと、リローラ→ベラルディ→ブラビア→ベラルディとコンビネーションで崩される。

ベラルディを止めようとケシエがプレスにいくが、もちろんその後ろにはセンシがいる。

ここも簡単にセンシに出されてチャンスを作られる。

ケシエとスソがセンシへのパスコースを切ろうとするような動きをすることは何度かあったが、ほとんど機能せず、すべてが中途半端。ロカテッリからセンシへと簡単にわたる。

しっかりとコースを切ったとしても大外のロジェリオ→センシで簡単にかわされる。

今度はケシエががっつりとマンツーマンでつこうとすると、ボアテングへのコースが空くため、フェラーリから直接ボアテングへとわたり、結局サイドのディ・フランチェスコへと展開されてしまった。

今度はロジェリオを高い位置で使うため、センシはスソの視界に入るように斜めに下がる。すると、今度はディ・フランチェスコが内側のハーフスペースへ入り込みフェラーリから楔を受ける。そして上がってきた大外のロジェリオへ展開された。恐ろしいのは、これらはわずか15分間でミランがやられたパターンだということ。ミランはただただ自分たちの動きを利用され続ける時間が続いた。

前半15分前後からカスティジェホとチャルハノールのポジションが入れ替わり、スソもCBをケアする形になった。しかし、センシが下りてきて右サイドでフリーのベラルディへと展開された。この形も前半のうちにやめてしまった。ミランもアタッキングサードの崩しでは戦えるのと、サッスオーロの守備が比較的脆いので何度かチャンスはつくりだせていたが、サッスオーロは気持ちいいように、前半の20分間は自分たちのプレーができていた。

・それでも局面で勝てれば・・・

そんなビルドアップでやられ放題のミランだったが、サッスオーロの攻撃にも徐々に慣れ始める。そして多くのチャンスを作りながらも、決定機までは持ち込めず、徐々に精度を欠いてきたサッスオーロ。少しずつ、ミランが試合を支配していく。

この日のミランはサッスオーロが常に前からくるチームではなかったため、普段よりは安定したビルドアップをみせる。それでもここぞというときにスイッチを入れてくるサッスオーロ相手にはうまくいかなかったのだが、それでも一発でチャンスをつくる。サッスオーロのCBはとんでもない位置まで出てきてボールを奪おうとするところがあるため、この場面でもスソについているのはCBのフェラーリだ。ということは、サッスオーロの最終ラインは圧倒的に人数不足ということだ。ビリア→スソへとわたり、スソが個人技でフェラーリをはがすか、ケシエに出してケシエがロカテッリをはがすかすれば、一気にチャンスだ。

ミラニスタにとっては懐かしいロカテッリの守備の局面でのやらかし。サッスオーロ側からしたら絶対に前を向かれてはいけない状況で、あっさりとケシエに前を向かれ、そのままドリブルで運ばれる。すると、あれだけ前に人数をかけてきていたので数的優位の状況。ケシエは自らシュートを選択して、ミランが先制点をもぎ取った。

・低くコンパクトに守るミラン

一点を先制して前半を折り返したミラン。後半に入ると、もうすでにラインを大胆に下げて、CBへのプレスも放棄した。守備的な4-2-4のような形になり、よりコンパクトに守り、カウンターを狙っていくスタイルへと変更した。対するサッスオーロはコンパクトに守られても、戦い方を変えなかった。ミランは前半のうちにすでにサッスオーロの攻撃に慣れてしまっているのと、よりコンパクトに守っているため、サッスオーロの攻撃に怖さがなくなっていき、前がかりになるサッスオーロに対してのカウンターは威力を増していった。

すると後半5分、ボールを奪うとボナベントゥーラから一気に前線のスソへとロングボール。ミランの前4人は一気に前線へと駆け上がる。サッスオーロは前がかりになっているため、ここでもスソはフェラーリとマンツーマンだ。

スソが見事にボールをおさめると、カスティジェホ、チャルハノール、ボナベントゥーラがものすごい勢いで上がってくる。するとスソに時間をもたせることに成功したので得意のカットインからシュートを決めてミランに二点目が入った。

・賭けの采配がすぐ裏目に出たデ・ゼルビ

二点を取られた後、サッスオーロはディ・フランチェスコに代えてボガ、ブラビアに代えてヂュリチッチと攻撃的な選手を二枚同時に入れた。システムはおそらく4-3-3のままだが、今まで以上に前がかりになる交代策で、点を取りに行く姿勢を見せた。しかし、この賭けの采配がすぐに裏目に出た。

ミランがボールを保持、ビリアがボールを持つとケシエへのコースを消そうとヂュリチッチとロカテッリが二人とも引っ張られてしまっている。ビリアは冷静にサイドでフリーになっているチャルハノールへと展開。

チャルハノールにわたると、ヂュリチッチとロカテッリの戻りが遅いためカスティジェホが完全フリー。ドリブルで切り込んでからシュート、ミランにとっては欲しかった三点目が、サッスオーロにとっては絶対に避けたかった追加点が決まった。カスティジェホは移籍後初ゴールだ。

その後サッスオーロがヂュリチッチのゴールで一点を返すも、ラクサールやカラブリアを投入して逃げ切りを図るミラン相手に点が奪えず、アディショナルタイムのゴールで勝負あり。ミランが4試合ぶりの勝利をあげた。

・おわりに

正直前半のやられ方をみると、ガットゥーゾの手腕を評価しづらいが、後半にラインを低くしてコンパクトに守りにいったのはここ数試合の結果からみても正解だった。この試合のように最終ラインからのビルドアップにこだわらず、妙にバランスを失ってしまうプレッシングの仕方を変えれば、ミランはある程度の戦い方はできるのではないだろうか。一方サッスオーロは課題である守備の脆さが全面に出てしまう試合となってしまった。前半の早い時間に先制点が決まっていれば、全く違う試合になっただろう。さらに前半のうちにサッスオーロの攻撃にミランが慣れて対応できるようになったあと、デ・ゼルビが特に手を打たなかったのには驚いた。あるいは後半開始直後からミランがこんなに引いてくるとは思わなかったか。ただ、サッスオーロのサッカーが素晴らしいことには変わりはないので、今後も楽しみにしている。次節、ミランはキエーヴォと、サッスオーロはナポリと対戦する。ミランは今季初の連勝をできるか、サッスオーロは連敗を阻止できるかに注目だ。

コメント

  1. Aki より:

    まずは、ここ3試合の鬱憤を晴らす結果に大満足です。
    とはいえ序盤のヤラレっぷりから考えて今後が晴天ではないので、ここから改善して調子を上げていってほしいですね。
    ずいぶん前からミランの中途半端なプレスは、それなりの相手にはいなされてスペースを与えてしまっているので連携強化するか引くかどっちかにしないといけないんですけど、直らないですね…そしてビルドアップもリスクのが高いとしか思えません。チームのレベルを1つ2つ上げるための苦しみかもしれませんが、個人は良い選手がいてもスカッドとしてやりたいことと合ってないような…。
    やり方を少し変えると勝てるチームになりそうな気がしますけど、僕にはわからない難しさがあるんでしょうね。
    とにかく、まずはでルビー前まで連勝してほしいです!!
    そして、カスティジェホ初ゴールおめでとう!!

    • シミズ より:

      Akiさん
      この試合はいろんなことが偶然にも良いほうにかみ合った、という印象なのでチームとして改善するべきところはほとんど変わってないですね。それでもひとつ勝てたことで、メンタル的にも余裕を持っていい方向へもっていけたらいいですね。
      カスティジェホ、もっと苦労するだろうなあと思っていたので、これはうれしいですね。

  2. YT より:

    更新ありがとうございます。
    カスティジェホのトップ起用とプレーは、ミランが制した06-07シーズンのCLのアーセナル対PSVの2WGの4-3-1-2システムを彷彿とさせました。
    トップ下に位置したメンデス(PSV)とカスティジェホがそれぞれミドルを決めるというおまけ付きで面白かったです。
    ご指摘のプレスのチグハグさ、目立ちましたね。
    4-3-3では相手CBにIHがプレスにいくのは定石ではありますが、それは、トップの選手もCBにプレスに行くのとセットという認識だったので、トップがアンカー(ロカテッリ)を見て、両インサイドハーフがそれぞれCBにプレスに行くことは意外でしたね。
    なんせプレス効果が発現するまでの距離が長いので。
    どんな狙いと効果があり、リスクとのバランスはどうなのか読みにくい形でした。
    点が取れて引いてからは、どちらかのIHが残ってビリアの横に位置する形になったようでしたが、こちらの方が安定して見えました。
    攻撃で気になるのは左サイド。
    ボナベントゥラとチャルハノールのプレーの噛み合わせがしっくりいってないように思います。
    得意エリアが重なりがちで、窮屈そうに感じる場面が散見されました。
    特にチャルハノールは大まかに分類するとボールの出し手側の選手だと思うので、彼の前方にボールの受け手の選手を複数置いてあげたいなと感じました。
    ELオリンピアコスではクトローネとイグアインの動きが抜群で、チャルハノールのパスも冴えていたのを観ると、選手の特性と期待する役割、その配置、他の選手との組み合わせの設計を吟味する余地はまだたくさんあるように思います。

    • シミズ より:

      YTさん
      ミランの4-3-3におけるプレス問題、確かモンテッラのときからなのですが、ガットゥーゾが見事に引き継いでしまいましたね。正直ガットゥーゾの戦術は良くも悪くもモンテッラの遺産といった印象があります。選手のコンディションとメンタル面の向上によって、昨季はヨーロッパリーグ圏内まで持ち直しましたが、うーんこのままではどうだろう、という感じですね。後半からはビリアの横にケシエが残る傾向があり、守備面ではチーム全体のコンパクトネスもあってある程度安定してましたね。
      おっしゃる通りで、ガットゥーゾがチーム構造の最適解を見つけてくれれば、今の状態よりもはるかに良くなると思います。できれば9月中にというのが個人的な希望(アンチェロッティのナポリのように)でしたが、まだまだ遅すぎることもなく。少しずつ改善されていけばいいですね。