勝てずとも成長するサッスオーロ、デ・ゼルビ監督の苦難【第10節~第14節までを振り返って】

デ・ゼルビのサッスオーロは、第8節ナポリ戦でアンチェロッティの4-4-2により対策され、今季初の無得点で敗戦。続く第9節サンプドリア戦でもスコアレスドローに終わり、今季開始から7試合で15得点を奪った攻撃は完璧に対策され始めていた。



・サッスオーロ対策とは

そのサッスオーロ対策だが、簡単にまとめるとこうなる。

1.最終ラインからのビルドアップに対して、中→中で中盤を経由して縦に出されるのを警戒して、前線の選手は中盤(基本2枚)へのコースを切りながらサイドへとボールを誘導

(ナポリは非常にコンパクトな4-4-2でブロック形成。マニャーニからWBへのフィードは皆無だったので、両脇のCBへ出すしか選択肢がない)

2.サイドへ展開されると全体でスライド、パスコースを消しながら追い込み

(この追い込まれ方でサッスオーロの選手たちは焦ってボールを失い、そのまま失点というパターンが明らかに増えた)

うまくビルドアップが機能しなくなると、最後の質も悪化してきて、きれいに崩したりするシーンはリーグ序盤に比べてほとんど見られなくなった。デ・ゼルビはビルドアップの改善に全力で取り組んでおり、その努力はほぼ毎試合のようにピッチ上で見て取れるので、こちらとしては楽しいのだが、ビルドアップに全力を出しすぎて、ほかの部分の改善が見られないのは少し残念だ。ディフェンス面では3バックの両脇が釣りだされて、クロスを入れられて失点というパターンが定着しており、改善されそうな気配はまるでない。

なので、とりあえずはビルドアップ改善に取り組むデ・ゼルビを、サンプドリア戦以降の記事にしていない試合で簡単に振り返りながら、取り上げてみたいと思う。

・ボローニャ戦

第10節ボローニャ戦では、サッスオーロ以上にインザーギのボローニャに驚かされた試合だった。開幕早々インザーギの解任報道が出るなど、厳しい戦いを強いられていたボローニャ。現在も降格圏に沈んでいるが、試合をよく見てみるとそう悪くないチームだ。サンタンデールが前線に君臨しはじめたことによって、チームとしての戦い方がはっきりしてきた感がある。インザーギのボローニャについてはまたそのうち別の記事で書いてみたい。

ボローニャもナポリ、サンプドリアのようにしっかりと対策をしてきた。パラシオとサンタンデールの2トップ予想だったので3バックで挑んだサッスオーロだったが、ボローニャはサンタンデールの献身性をうまく使って4-1-4-1の形で前線からプレスをかける。マニャーニに対してサンタンデールはコースを限定させながらプレス、サイドへ誘導させて全体でスライド追い込み。4-4-2と違って4-1-4-1で守るボローニャは、アンカーにプルガルを置くことでディフェンス面でしっかりとケアできるようになり、前からプレスをかけにいくことを可能にしていた。

ナポリ戦の後半から積極的に取り組んでるのはマニャーニからのフィードだ。ナポリ戦前半ではその選択肢がなかったため、両脇のCBへと出すしかなく、それは相手にとって非常に守りやすくなっていた。しかしナポリ戦の後半からマニャーニから一発でWBへと展開しようとするシーンが見られるようになった。しかしその質は非常に悪く、一本もちゃんと通ってないのでは、と思わせるほどミスになっていたが、ボローニャ戦あたりからはしっかりと通せるようになってきた。おそらく、徹底的に練習しているのだろうし、ミスをしてもいいから試合の中で積極的にチャレンジさせて、その結果選手のレベルを上げていくのは素晴らしいし、見ていてとても楽しい。まだまだいい選手とは言い難いものの、マニャーニ、好きな選手になりつつあります。

試合は2-2のドロー。マルロンのスーパーゴールとPKによる得点でなんとかドローに持ち込んだ、という印象の試合だった。

第11節キエーヴォ戦は2-0で勝ちはしたものの特に見どころなく。ロジェリオの中盤化の動きこそあったものの、サッスオーロの出来もひどく、キエーヴォももちろんひどく、とてもつまらない試合だった。サッスオーロの2点目だけは面白かったのだが。

・ラツィオ戦

今季のラツィオを観ていると、ここ数年の強さはないなという印象を受ける。そのラツィオとの一戦でロカテッリがスタメン復帰。ロカテッリがスタメン落ちしている間出場していたマニャネッリやブラビアはいい選手ではあるものの、縦に出すことのできる選手ではないため、窮屈な攻撃になりかねない。その点ロカテッリはチームの中で唯一縦に出せる選手なので、贔屓目抜きにとても貴重な選手だ。残念ながらディフェンス面で大きく穴になるためスタメンで使われる機会は少なくなっているのだが。

そのロカテッリが新たなビルドアップのパターンをみせる。左WBのアジャポンが高い位置を取ることでパトリックをピン止め。アジャポンがいたスペースにロカテッリが下りてビルドアップの基点とする。中→中を切られてサイドに誘導され、そこで追い込まれるパターンへの対策として、中盤の選手をサイドバックの位置へと落としてビルドアップを安定させる方法をラツィオ戦で試した。アジャポンがその位置で受けると、連動してプレスをかけられてしまうが、ロカテッリが下りてくることでビルドアップは安定。もしパローロがついてきたらセンシがフリーになれる。このビルドアップはラツィオに対してかなり有効だった。ディフェンスは相変わらずボロボロだったが、前半はほとんどサッスオーロペースで試合は進んでいった。

試合は1-1のドロー。両チームともに勝ち点3を目指して攻め続けた非常にいい試合だった。

・パルマ戦

驚くべきことに、今季のサッスオーロはこのパルマ戦を含む13試合で13通りのスタメンを使用。ほとんどメンバー固定&交代枠すら使わなかったミランとは両極端である。このパルマ戦ではロカテッリはスタメンから外れ、ブラビアが出場。前節ロカテッリがやっていたサイドバック落ちをブラビアもやろうとするが、ブラビアの場合そこからうまく展開できない。さらにボアテングが中に入って自由に動いたり、ダンカンが常にライン間で受けようとする動きをみせるものの、どうしても縦にボールが出てこない。ディフェンス面ではマルロンがサイドバックでプレーしたり、可変式システムとなっているため、いつもより最終ラインがガタガタ。結局ジェルビーニョに散々やられてしまい、1-2で敗戦。

直近の第14節ウディネーゼ戦ではアンカーの位置にセンシを置いてみたものの、結局最後の崩しができずに0-0のスコアレスドロー。この試合も見どころはあまりなかった。

・おわりに

マニャーニのフィードは試合を追うごとに正確性が増していき、ロカテッリなどの中盤のサイド落ちも試合によっては効果的にビルドアップを助けている。ただ、どうしても最後の質が足りないのだ。デ・ゼルビは自身のサッカー観について、こう答えている。

チームを勝たせてくれるのは誰なのか。私は質の高い攻撃陣だと考えています。こういった前提条件をもとに考えた場合、無意味にボールを蹴り出してしまうのは効果的とは言えない。

1対1に強い、強烈なシュートやイマジネーションを持っている、こうした違いを作れる選手たちをできる限り良い状況でプレーさせるにはどうするべきか。短いパスを繋いで、彼らをゴールに近い位置でプレーさせるのが最適だと考えています。チャンスを生み出せる選手ができるだけ自由に動ける状況を作るのです。

デ・ゼルビのサッカー観は個人的にとても好きで、だからこそサッスオーロのサッカーを追いかけているのだが、このチームはバルセロナやシティではなく、サッスオーロなのだ。たとえビルドアップがうまくいっても、最後の質だけはどうしようもないのだ。これはポジショナルプレーを取り入れるすべてのスモールクラブが抱える問題なのかもしれない。もちろん改善できる、改善しなければいけないところはたくさんある。ディフェンス面(というよりネガトラ時の動きの質、良いネガトラは良い攻撃を生み出す)などは問題山積みだ。個人的に、攻撃面で改善を目指し続け、ディフェンス面が疎かになってしまっているこの感じは、フィオレンティーナ時代のモンテッラとかぶったりする。それらの問題を少しずつ改善していく過程を、成長していく過程を見届けるのが今季の楽しみのひとつである。選手や監督が成長していくのをゆっくりと見守る楽しさは、ミランではあまり味わえないものだから。