【激闘の名勝負】魅力溢れる若き挑戦者アヤックスとスター軍団バイエルンの意地【第6節アヤックス対バイエルン】

アヤックスは4-3-3、あるいは4-2-3-1とも呼べるシステムで、ポジションは非常に流動的。国内リーグでも安定した戦いをしており、15節を終えた時点で13勝1分け1敗の2位。1敗は首位のPSV戦で喫したものだ。チャンピオンズリーグでもすでにグループリーグ突破は決めており、素晴らしいシーズンを送っている。

バイエルンは4-2-3-1でキミッヒとゴレツカが中盤で起用されている。国内リーグは14節を終えた時点で8勝3分け3敗の3位となっており、首位ドルトムントと勝ち点差が9。しかしチャンピオンズリーグではグループリーグ突破を決めている。

バイエルンホームで行われた第2節は1-1のドロー。アヤックスホームで行われるグループリーグ首位突破をかけた最終節の一戦は、先日のプレミアリーグ第16節チェルシー対マンチェスター・シティに匹敵するような、素晴らしい試合となった。



・10分間でハッキリと見えた両チームの戦い方

アヤックスのビルドアップは基本CB2枚にデ・ヨング、ブリントを加えた4枚で行われる。両SBが高い位置で幅取り役、ツィエクとネレスの両ウイングは少し中に絞り気味のポジショニング。表記上トップに入っているタディッチは自由に降りてきたり、サイドに流れたりする。タディッチが自由に動く代わりにファン・デ・ベークがトップの位置に入ったりする。4-4-2気味で守るバイエルンだが、レヴァンドフスキとミュラーの2枚ではビルドアップを止めることはできず、基本アヤックスがボールを握る展開に。

アヤックスはSBの選手が非常にカギを握り、SBの選手の得点も多い。前半2分のシーン。ネレスが内側に絞ってCBとSBの間の良いポジショニングをしていることで、ニャブリはネレスへのパスコースを消すために中へ絞る。その結果タグリアフィコへのパスコースが空くので、ブリントはタグリアフィコへ。

慌ててボールに寄せに行くバイエルンだが、タグリアフィコからファン・デ・ベークへ斜めの楔のパスが入り、ファン・デ・ベークはワンタッチでネレスへ。ネレスからもう一度ワンタッチでもらったファン・デ・ベークがシュート。開始早々素晴らしい崩しをアヤックスは見せた。

前半9分にはマズラウィが中に絞ってツィエクにスペースを与え、デ・リフトからツィエクへボールが渡る。

ひとりで突破もできるツィエクがボールをキープしてる間に、マズラウィがオーバーラップ。マズラウィからのクロスにタディッチが頭で合わせる惜しいシーンを演出した。アヤックスは前線に明確なターゲット(ベンチにはフンテラールやドルベリはいるが)がいなくとも、崩してシュートまで持ち込む迫力をみせることができる。

さらにアヤックスはサッスオーロが出来ていないネガティブトランジションのボール即時奪回の動きも素晴らしい。

ボールロスト後、すぐに近くの選手で囲い込み。ボールの即時奪回を図る
その場で奪い取れなくても、キミッヒが後ろに下げたところでネレスが猛ダッシュでプレス
苦し紛れに前へ蹴ったところで再び2~3人で猛プレス
焦ってニャブリに出したボールを簡単に回収

自分たちでボールを保持してバイエルンを自陣へと押し下げ、流動的でありながらチーム全体で共有している崩しのアイデアを用いて得点を狙う。高い位置でボールを失ったとしても、即座に囲い込んでボールを奪い取り、再びボールを保持する。これを試合の中でずっと繰り返すアヤックスの戦術は、選手の質などに差はあれど、さながらグアルディオラのチームのような完成度だ。

対するバイエルンの攻撃はいたってシンプルだが、理にかなったものだ。まずビルドアップを前から奪いに行こうとするアヤックスに対して、ノイアーは意図的に中盤を飛ばして前線へ。開始1分でそのままの流れでニャブリがシュートまで持ち込んだ。ライン間の距離が空いてしまうアヤックスの前プレを利用して、前プレを無効化させたうえで、前線の優れたアタッカーたちがゴールを狙う。

さらにアヤックスの中盤にはプレスをかけるバイエルンは、そのアヤックスのビルドアップでミスが生まれボールをカットすると、ニャブリやリベリが一気に前線へと運ぶ。前半8分にキミッヒがブリントへプレスをかけると、焦ったブリントからデ・ヨングへのパスが弱くなりニャブリがカット。一気にシュートまで持ち込んだ。

このように、両チームともこの試合での自分たちの戦い方が、前半10分間でハッキリと表れており、すでに何度かチャンスも作り出していた。そして前半13分に先制点を奪ったのはバイエルン。アヤックスのビルドアップ、タグリアフィコのミスから得たコーナーキックの流れから、レヴァンドフスキが決めた。ハッキリとした戦い方をする両チームだったが、それが先に点に結びついたのはバイエルンだった。前半はアヤックスが主導権を握りつつも、バイエルンが1点をリードして終える。

・アヤックスによる理想的なゴール

後半は1点をリードしているバイエルンが、落ち着いてボールを保持しようと試みる。アヤックスも前半同様自分たちで主導権を握りながら戦いたいので、後半開始から15分間は攻守が目まぐるしく変わる展開に。しかし後半16分にアヤックスが同点に追いつく。

ボールを左右に散らしながら保持することで、相手のポジショニングを少しずつズラしていく。はじめ、バイエルンにとって危険なバイタルエリアやハーフスペースにはほとんど自由に使えるスペースがない。しかしボールを回していくことで、スペースが生まれ、そのスペースを使ってワンタッチで繋ぎ、最も危険なエリア内のアシストゾーンへと進入。あとはゴール前に入れて押し込むだけの完璧なゴール。ボールを保持することで主導権を握りたいチーム(例えばこのブログでよく取り上げているポジショナルプレーを採用するサッスオーロやアヤックス、べティスのようなチーム)にとって、理想的なゴールだ。ちなみに薄々気づかれている方も多いと思うが、個人的にも非常に好きなサッカーのスタイルを採用するチームによる、非常に好きなゴールだった。

・激動の25分間

バイエルンは同点にされた直後、ニャブリに代えてチアゴを投入。システムを4-3-3へと変更した。同点に追いついたアヤックスはその勢いのままバイエルンを攻めたてるが、67分にウェーバーが一発退場。ブリントが最終ラインに下がる。1人少なくなり、ボールが前に運べなくなってくるアヤックスに対して今度はバイエルンが攻めたてるが、75分にミュラーが一発退場。10人対10人の試合となった。その後、勝たなければ首位通過ができず、負けてもグループステージ突破が決まっており失うものがないアヤックスは、ファン・デ・ベークに代えてドルベリを投入。積極的に得点を狙いに行く姿勢をみせる。

ディフェンス時はブリントやデ・ヨングが最終ラインに入るが、攻撃時はワンバックのような形になっていたアヤックス

そして81分、カウンターから抜け出したドルベリをボアテングが倒してPK獲得。前回対戦時も言ったがボアテングはディフェンス時に不用意なプレーが多すぎる。このPKをタディッチが決めてアヤックスが逆転。それでもワンバックのまま戦い続けるアヤックスだったが、87分にチアゴの個人技からエリア内でタグリアフィコが倒して今度はバイエルンにPK。これをレヴァンドフスキが決めて再び同点とした。アヤックスは攻める姿勢を変えず、今度はネレスに代えてフンテラールを投入。

アヤックスはワンバックは継続して1-4-4のような形に

ディフェンスラインに人数が足りず、GKからのビルドアップでミスが出たアヤックスはボールを奪われコマンにゴールを決められてバイエルンが再び1点リードする展開に。

アディショナルタイムは7分表示。なにがなんでも点を取りたいアヤックスは95分にタグリアフィコのゴール(かなりオフサイドな気がするが)で同点。結局この素晴らしい試合は3-3の引き分けに終わった。

・おわりに

先日のサッスオーロ対フィオレンティーナのような劇的な試合展開だったが、こちらは退場者を出しながらも内容は素晴らしく、何度でも見たくなる試合となった。若く魅力溢れるサッカーで一歩も引かず挑み続けたアヤックスと、ビッグクラブとしての意地を見せたスター軍団のバイエルンというような構図の最高の試合だった。個々の選手たちのプレー(特にデ・ヨング、デ・リフト、ファン・デ・ベーク、ツィエクあたりは圧倒的だった)も素晴らしく、スタジアムの雰囲気も良く、通常何度も観なおしてから記事にするのだが、試合後すぐに記事にしたくなった。もしお暇があれば、ぜひ観てほしい試合だ。