【ベシーノ・タイムで勝負あり】あまりにも勝ち運がなかったミラン【第28節ミラン対インテル】

ミランは年明けから絶好調。リーグ戦ここ5試合で5連勝、12得点2失点というスコアだけみれば安定した戦いぶり。1月に加入したパケタ、ピョンテクがすぐにチームのキープレーヤーとなり、チームとしての戦い方にピタリとハマった印象だ。イグアインではできなかったDFラインとの駆け引き、裏への抜け出し等で最終ラインを下げさせて、ライン間でパケタやチャルハノールがボールを受けることで、攻撃にある程度の流動性が生まれてきている。守備は4-5ブロック(あるいは4-4-スソ)で、バカヨコを中心に人数と質で守ることができていた。

一方のインテルはピッチ内外でのドタバタが続いている。リーグ戦では勝ちきれない試合が増え、ヨーロッパリーグではフランクフルト相手に敗退。チームの中心として期待されたナインゴランの離脱、イカルディ・ワンダナラ問題等、明らかに混乱状態、スパレッティ監督の去就も騒がれている。

順位表ではミランが勝ち点51で3位、インテルが勝ち点50で4位と、上位同士で戦う久しぶりのミラノ・ダービーだったが、チーム状態は完全に対照的だった。しかし、直前のチーム状態など無関係に激しい試合が繰り広げられるのがここ数年のミラノ・ダービーで、事実インテルは好調ミランを圧倒する試合への入り方をした。



・ベシーノの配置、バカヨコの迷い

試合は前半開始早々動いた。ミランは守備時4-1-4-1でライン形成。中盤のライン設定を高めにしてインテルの中盤から展開されることを嫌い、ビルドアップを阻止する。おそらく基本はサイド追い込みからの圧縮でのボール奪取を狙う形だ。

対するインテルの攻撃の狙いは、ミラン最終ラインと中盤の間に積極的にポジショニングするベシーノとぺリシッチ(おそらくポリターノは右からの攻撃で、よりワイドなポジショニングをすることが優先されていた)へとボールを進めることだ。特にこの試合ではカバーエリアが広いケシエのサイドではなく、守備面で優れているわけではないパケタとチャルハノールのサイドから攻めることを選択して、彼らの後ろにベシーノを配置した。いわゆるアンカー横のスペースにぺリシッチとベシーノを配置して、ミランの中盤ラインをかわしてそこにボールを送り込み、ミランががっつりと守備ブロックを敷く前に前線の選手だけで攻撃を完結させてしまおうという狙いだろう。そしてこの狙い通りに、インテルは前半3分に先制点を取る。

デ・フライ、ブロゾビッチ、ダンブロージオ、ベシーノで菱形ビルドアップ

パケタとチャルハノールがベシーノへのコースを消しつつサイド追い込みへ。ガリアルディーニをケシエが、ブロゾビッチに対してはバカヨコが前へ出て行く構えを見せていた。ベシーノとぺリシッチはライン間にポジショニング。ロドリゲスはポリターノが、ロマニョーリはラウタロが牽制。インテルは外→内で簡単にベシーノへとボールを進めて、右サイドでベシーノ、ポリターノ、ぺリシッチで崩し。最後は完全フリーでベシーノが押し込んだ。

失点した後もベシーノにライン間で前を向かれていたミランは、10分過ぎからバカヨコが少しずつベシーノを意識するようになる。右から組み立てるインテルはバカヨコがベシーノを意識するようになったのをみて、左から組み立てるフリをする。左でシュクリニアルから後ろ向きのぺリシッチへと縦に通すと、ぺリシッチはガリアルディーニに落として、中央でフリーになれているベシーノへと展開する。ミランの守備設定の穴を、あまりリスクをかけずに正確に狙い続けていたインテルに対して、ミランにとって前半は序盤から後手後手となっていた。

ミランは前半途中から明確に4-2-3-1へとシステムを変更。バカヨコとケシエを並べることでベシーノ対策とした。しかし前半のミランの攻撃はかなり停滞していた。スソ、チャルハノールは下がってボールを受けるが、チームとして連動した動きは少なく、インテルの集中したディフェンスの前では脅威にならなかった。前半のミランのシュートは、ほとんどがエリア外からのチャルハノールのシュートだった。

・後半から攻撃志向の4-4-2へ

ミランは後半開始からパケタに代えてカスティジェホを投入しトップ下に配置。自由を与えることで攻撃にダイナミズムが生まれはじめる。が、後半6分にセットプレーからデ・フライが決めてインテルが追加点。ミランは前後半ともに早い時間でやられてしまった。その後ミランもセットプレーからバカヨコが決めて1点返すと、ロドリゲスに代えてクトローネを投入。システムを4-4-2へと変更した。

ミランは4-4-2へとシステムを変えたことで、前線にピョンテクとクトローネの2枚、スソは内に絞りサイドにケシエのオーバーラップスペースを確保、左サイドはカスティジェホが幅取り、両サイドバックが高い位置を取り始めた。インテルが重心を低くしたことによって、ビルドアップはチャルハノールに任せる形に。能動的に攻撃志向を強くすることで、試合の主導権を握り始めたミランだったが、後半22分にインテルにPKを与え、再び2点差にされた。ケシエに代えてコンティを投入することで、より縦に早く、クロス放り込み作戦に出たミランは、またもやセットプレーからの流れでムサッキオが決めて1点差。しかし、ボルハ・バレロ、カンドレーヴァ、ラノッキアと守り切る姿勢を強めていったインテルがしっかりと守り切ってそのまま2-3で勝利した。

・ミランの好調は幻か?ビッグマッチでは空回り・・・

・おわりに

今回のダービーは、なんやかんやで前半3分間で勝負ありといった印象が残った。ベシーノが自由にプレーできていた時間を除けば、ミランは特別内容が悪かったとも思えない。それでもその早い時間帯での失点、さらにはミランがチームに変更を加えたタイミングでの2失点。あまりにも勝ち運がない、というような敗戦だった気がする。もちろん、ベシーノ・タイムを耐えていればミランが勝っていたとも思えないのだが。

ミランにとってここ数か月、内容は悪くても勝てる試合が続いた。強いチームの証でもあるロースコアでの勝利だが、ピョンテク、パケタの二人を組み込んだチーム構造が対策されはじめているのは事実で、またシーズン中に何度もみた4-4-2と4-3-3の併用(変わるのは選手の基本ポジショニングだけ)で誤魔化していくのか、それとも選手の質でごり押していくのか、どちらになるのかある意味で楽しみだ。ミランというクラブに限って言えば、個人的には内容よりも勝利が最優先されるため、今季4位以内で終わることができれば成功であり、ポジティブな気持ちでシーズンを終えることができる。ただ、個人的なサッカー観(娯楽芸術的な観点)でいえば、今のミランにはそういった意味での楽しみをほとんど見いだせないのでどうにかしてほしい、とも思う。いろいろと難しいところではあるけれど。