ジャルディム・モナコの簡単な戦術分析

ようやく2018/2019シーズンが終わり、今季もミランは4位以内に入れなかったわけですが、話題はすでに来季の監督は誰になるのか、というところに。個人的に今季は完全に疲れ切ってしまったので、オフシーズンは力を抜いてゆっくりとサッカーを観ていこうと思います。ということで、まずはガットゥーゾの後任候補として名前が挙がっているモナコ指揮官ジャルディムについて。躍進モナコとして注目された2016/2017シーズンはチャンピオンズリーグで数試合観たなあ程度でしか覚えていなかったので、いろいろとおもしろかったです。

今回は国内リーグを優勝してチャンピオンズリーグでもベスト4まで残った2016/2017シーズンではなく、国内リーグ38試合でわずか26失点で3位に終わった2014/2015シーズン、前年から大幅に戦力ダウンした2017/2018シーズンの試合を分析対象としています。

まずは2014/2015シーズンのチャンピオンズリーグからアウェイでのアーセナル戦。スターティングメンバーは次のようになっています。

ジャルディムのモナコといえば4-4-2のイメージが強いと思いますが、4-2-3-1の使用頻度もわりと多いです。ただ4-2-3-1といっても様々な状況に合わせて変わる可変式システムです。それと2016/2017シーズンのイメージが強すぎて非常に攻撃的なサッカーをする監督だと思いがちですが、2014/2015シーズンにおいては、攻撃戦術はオーソドックスなものですが、注目すべきは中盤の質を活かしたその守備戦術です。

基本は4-4-2でセット。2トップが中央へのパスコースを封鎖してボールをサイド/ハーフスペースへと誘導していきます。中央のスペースへは侵入させないように、全体でスライドしていきます。相手がサイドを崩しにくるか、無理に中央を使ってくるかを待ちます。

サイドアタックにおけるチャンネルへの動きには3対2で中盤の選手がカバーリングに入りますが、ジャルディムのモナコはここがファビーニョやコンドグビア、バカヨコだったりと、圧倒的なボール奪取能力を有する選手たちなので、そうそう崩されません。エリア内のDFは空中戦に強いタイプを置いているので、その場でマンマーキング。上がってくるクロスへ対応します。逆サイドのSHはトランジション時のカウンター要員として待機します。

守備において中央封鎖が遅れてしまっても、モナコは中盤の質でなんとかしてしまいます。

相手のサイド攻略に対して中盤のカバーリングでボールを奪い取ることで、そのままカウンターを発動させることができ、マルシャルを活かして得点まで結びつけることができたシーン。ちなみに先制点はコンドグビアのミドルが決まっており、アウェイでアーセナル相手に2-0で勝利しました。

2014/2015シーズンのジャルディム・モナコは完全に守備のチームでした。チーム全体でのゾーナル守備としては若干不安定な面があるのと、ネガティブトランジション時の動きの悪さが目立ちましたが、しっかりと体系化できていました。ジャルディムのモナコはまずこの守備体系をベースとして、2016年以降(選手の個の質が上がって以降)攻撃の面でも独自のものを構築していきました。

それでは2017/2018シーズンのアウェイでのリヨン戦におけるビルドアップから見ていきます。まずはスターティングメンバーから。

2014/2015シーズンでは4+2でビルドアップしていたのですが、2017/2018シーズンはより工夫が見られました。

まず後ろは2CB+中盤1枚で、両SBは中盤まで上がってサイドに固定、左WGは中央寄りにポジショニングすることで3-4-3のような形をとります。そして基本は右からビルドアップしていきます。右サイドをオーバーロードさせてサイドレーンからボールを前へ進めていき、短い距離感によるコンビネーションで崩していきます。ボールを失っても距離感が近いため、即時奪回を目指してそこからショートカウンターを目指していきます。

得点シーンはやはりポジティブトランジションからの速攻がメインとなります。

2016/2017シーズンはこれらの戦術をエムバペ、ファルカオ、ベルナルド・シウバ、ルマルなどの前線や、ファビーニョとバカヨコの中盤や、メンディなどのSBなどがプレーしていたわけで、それは強いよねといった印象。ただ、2017/2018シーズンのこのリヨン戦では、中盤の構成がモウチーニョとメイテだったことでミスをカバーしきれなかったことや、前線の選手たちの守備の強度の低下によって守備組織が機能していませんでした。

モウチーニョもメイテもカバーできていない
ファーストディフェンスを解除された後、中央を封鎖できず簡単に崩された

4-4-2でボール奪取ゾーンをチームで定めたサイド追い込みゾーナル守備を完璧に構築しなければ中盤の選手の質によってはいとも簡単に崩されてしまうことがわかりました。バカヨコの存在がどれほど重要だったかがわかります。

簡単ではありますが、以上がジャルディム・モナコのおおまかな戦術です。ミランが来季の監督として招聘するのかはわかりませんが、ミランとは関係なくとも今後注目していきたいです。

次はシモーネ・インザーギのラツィオあたりを振り返っていければと思います。