【伝統の一戦】お互いに消極的な試合となったミラノダービー【第9節インテル対ミラン】

インテルは公式戦6連勝と絶好調。イカルディがゴールを決め始めてから勝ち続けており、やはり存在の大きさを感じさせる。ただ6連勝といっても内容も伴っていたかと言われればなんとも言いづらいものがある。それでも勝っているだけ素晴らしいのだが。このダービー後すぐにチャンピオンズリーグでバルセロナ戦が控えているが、もちろんダービーはベストメンバーで挑む。

ミランも公式戦3連勝。こちらも内容自体はあまり変わりがないが、勝ち始めているのは大きい。アタッキングサードの崩しは形がなんとなくできてきているため、ビルドアップやプレッシングの見直しが重要になってくる。ミランもヨーロッパリーグのべティス戦を控えているが、もちろんいつものベストメンバー。

近年は劇的なゴールが生まれることの多いミラノダービー。数年前よりは盛り上がり度が高くなってきた印象もあるダービーは、今回も劇的なゴールによる幕切れとなった。



・インテルのビルドアップ

まずはインテルのビルドアップから見ていきたい。基本システムは4-2-3-1だが、ビルドアップ時にはベシーノを一列あげて、ブロゾビッチのワンアンカー気味に変化する。サイドバックはあまり高いポジションを取らず、最終ラインの4+ブロゾビッチで押し上げていく形になる。両ウイングのぺリシッチとポリターノが幅取り役、そしてミランのプレスの構造としてインサイドハーフがCBへプレスに行くので、がっつりと空くことが多いビリアの両脇にベシーノとナインゴランがポジショニングする形でセット。ミランのプレスに対してリスクを取らず最終ラインに人数をかけ、プレスをいなしつつビリアの両脇をうまく使っていきたい狙いだ。

ゴールキック時はCBが開いて後ろから繋ごうとする意思をみせてミランのプレスを誘導。ミランが前から奪いにいこうとするのを利用して、前線に長いボールを送ったりフリーになっているアサモアを見つけて使ったりする。前半は何度かカラブリアを狙ってぺリシッチに長いボールを送りこんだ。前線の選手がおさめることができると、一気に局面は打開される。非常に柔軟性のある、デザインされたビルドアップだ。

・ミランのビルドアップ

ミランのビルドアップは相変わらずで、最終ラインからしっかりと組み立てていきたい狙いこそあるが、インテルのハイプレスに苦しむ展開。ボールが出される位置によってチーム全体がしっかりと連動してプレスをかけてくるインテルに対して、そもそもチームとしてビルドアップが明確にパターン化されていないミランでは組み立てがまったくうまくいかず。それでも頑なに後ろから繋ぐことしかしないので、サイドに追い込まれて苦し紛れに前線に長いボールを蹴ることが多かった。

ゴールキック時もCBはワイドに開いて後ろから繋ぐことを試みる。しかしインテルは明らかにチーム全体で前から奪いに行く意識があるので、ここでも連動したプレスでミランを苦しめる。

ドンナルンマからロマニョーリに出されたが、ロマニョーリはこの時点で追い込まれている。なのでチャルハノールへと出そうとするが、ヴルサリコがしっかり対応。チャルハノールがなんとかおさめたとしても、すでにインテルの選手数人に囲まれているため、基本はまた後ろからやり直す選択しか残されていない。そしてこのインテルの前からのプレスでいちばんやっかいだったのは、ナインゴランのプレスの強度と質だった。ちなみにナインゴランは前半30分に負傷交代。代わりにボルハ・バレロが入っている。

・ミランのプレッシング、インテルの回避

ミランはインテルのプレスに苦しめられ、なかなかビルドアップがうまくいかなかった。さらにミランのプレスも、チームとしての連動性、個々のプレスの強度、質に欠けており、なおかつアンカーポジションで覚醒した感のあるブロゾビッチにうまくいなされる。さきほどのミランのゴールキーパーからのビルドアップをインテルに奪われたあとの展開。ミランも流れで前から奪いにいく姿勢を見せる。

ケシエがいつものようにシュクリニアルへとプレスをかけるも、簡単にブロゾビッチを経由してアサモアへ。

アサモアからシュクリニアルへ再び渡ると、今度はイグアインがシュクリニアルへとプレスをかけにいく。

今度も簡単にブロゾビッチを経由してデ・フライへ。もちろんチームとしてまったく何も決まってないことはないと思うが、ミランのプレスはチームとしてというより個々の選手が、各々なんとなくやっている感がある。

それでも右サイドに展開されてからも前から奪おうとするミラン。流れからビリアが深い位置までプレスをかけている。ミランが前から人数をかけてきたならば、最初に書いたようにインテルはかわす術を持っている。

ハンダノヴィッチから、前線でロマニョーリと1対1の状況になっているイカルディへロングボール。もしイカルディがしっかりおさめられなくても、ミランの中盤が飛ばされてしまっているため、セカンドボールを拾う確率はインテル側にだいぶある。

前半はインテルが主導権を握って試合を進めていき、ミランはインテルのミスか、ロングカウンターによってチャンスを作る展開だった。

・ガットゥーゾの采配

後半がはじまってからも試合の展開自体はさほど変わらず。インテルはイカルディがいるエリア内へのクロスで得点を狙うがなかなか決まらず。ぺリシッチに代えてケイタ・バルデ、ポリターノに代えてカンドレーヴァなどを投入するも、決定的なシーンは少なく。ミランは体力もなくなっていくことで、より押し込まれる展開が続く。0-0のまま試合は進んでいく。

ミランは押し込まれる展開のなか、後半29分に最初の交代カードをきる。チャルハノールに代えてクトローネをいれた。もちろんこれまでの試合のようにイグアインとの2トップ、4-4-2へとシステムを変えるかと思いきや、そのまま左ウイングでクトローネを起用。チャルハノールは負傷交代だと思われるので、ディフェンス面での運動量、さらにミランの得点パターンとしていちばん機能しているのが右サイドのスソからのクロスなので、右サイドからの攻撃時にクトローネはエリア内に入っていく動きを求められていた。しかし、この試合で注目すべきだった点のひとつとして、右サイドからの攻撃数が普段よりも極端に少ないということだった。エリア内で違いをみせるクトローネは、左サイドでボールを受けても特別ななにかを持っている選手ではない。そして左ウイングのクトローネをエリア内で勝負させる前提として右サイドからの攻撃が成立していないといけないはずが、この試合では機能していなかった。これは単純に采配ミスと捉えられてもおかしくないかもしれない。

さらにケシエに代えてバカヨコを投入。ガットゥーゾはバカヨコを重用しているが、単純にいまだにどこをそこまで評価しているのか見えてこない。交代で入ったはずのバカヨコは、ネガトラ後にゆっくりとランニングで戻るシーンがあり、2年前、途中交代で入ったニアンがカウンター時にしっかりと走らずにモンテッラにブチギレられていたのを思い出した。しかもバカヨコはこれが初めてではない。ガットゥーゾはそういう所を許さないような人間だと思っているのだが・・・。最後の交代としてカラブリアに代えてアバーテを入れたのは完全に引き分け狙いの交代だろう。しかし結果的には、その直後に決勝点を決められてしまった。

ミランは後半から特にクロスに対してのエリア内の人数を意識していた。サイド深い位置をできる限り中盤に対応してもらい、R・ロドリゲスはニアゾーンを埋めるような形をとっていた。しかし最後の最後に、カンドレーヴァからダイアゴナルに走るベシーノに釣られてロマニョーリが引っ張り出されてしまう。

その結果、こちらもエリア内で圧倒的に違いをみせるイカルディとムサッキオが1対1の状況を作り出してしまった。ベシーノの素晴らしいクロス、イカルディの動き出し、ドンナルンマの判断ミスが重なりアディショナルタイムに決勝点。またもや劇的なゴールでインテルがミラノダービーを制した。

・おわりに

劇的なゴールで盛り上がりをみせた試合だったが、個人的にはもう少し積極的な試合が見たかった。インテルはサイドバックに高い位置を取らせず、サイドアタッカーは基本的に幅取り役に徹しており、攻撃時の迫力や個の魅力は見られなかった。ミランも基本的にブロックを敷いて構え、采配も到底勝ちに行くものではなかった。かつてのイタリアらしいサッカーといった試合だった。これでインテルは単独3位、ミランは1試合未消化の12位。ただ勝ち点差はほとんどないため、ミランは延期された試合に勝利すれば順位は上がる。しかし、これからビルドアップの仕方が見直されることはあるのだろうか・・・。